戸令21 籍送条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○21 籍送条(籍を送るの条)


《原文》
凡籍。応送太政官者。附当国調使送。若調不入京。専使送之。


《意訳》
戸籍を太政官へ送るにあたっては、その国の調使に持たせて送ること。もし調を京に入れない場合は、専用の使者を立てて送ること。


本
この条は、戸籍を都の太政官へ運ぶ使者について定めたものです。

国司から都へ、使者を立てて送る大事な提出文書は、年に4種類ありました。朝集使〔ちょうしゅうし〕の運ぶ「朝集帳」、正税使〔しょうぜいし〕(正税帳使)の運ぶ「正税帳」、貢調使〔こうちょうし〕(調使)の運ぶ「庸帳・調帳」、大帳使(大計帳使)の運ぶ「国帳」です。これらの使者を総称して「四度使〔よどのつかい/しどのつかい/しどし〕」といい、運ぶ書類を「四度公文〔よどのくうもん/しどのくうもん〕」、またそれに付属する関連帳簿を「枝文〔えだぶみ〕」といいます。

朝集帳というのは、一緒に送られるさまざまな公文書の総称で、たとえば、国・郡の官人の「考文〔こうもん〕(=勤務評定)」や、「計会帳(=年間に授受した公文書の目録帳簿。これによって、命令がきちんと履行されたかをチェックされる)」、兵士の名簿や僧尼の死亡帳といった内容です。これを運ぶ朝集使が、四度使のうち最重要の使者でした。

正税帳は、国・郡の主要財源である「正税」の収支報告書です。正税(律令初期は「大税〔たいぜい〕」)とは、郡の正倉〔しょうそう〕に納められて国司が管理した稲穀のことで、国に納められる「田租」と併せて「租税」といいます。

国帳は、戸令造計帳条に定められた予算把握のための統計報告書。

律令制下の戸籍とは、人民の血縁関係を証明し班田収受の台帳とするものです。

庸帳・調帳は、庸調の目録です。賦役令調庸物条の規定により、庸調は、それを徴収される家の人が「運脚〔うんきゃく〕」という人夫として駆り出されて運び、庸帳・調帳を運ぶ調使(貢調使)もそれに付いて都まで送ります。

この籍送条は、その調使に戸籍も運ばせなさい、と命じています。このように、別の目的で発遣される使者を活用するのを、便宜的な(=都合がいい、間に合わせの)使者という意味で「便使〔たよりづかい〕」と呼びます。調使が便使として使われるんですね。

水害や干ばつ等の災害時、あるいは辺境の国では、課役が恩免されることがあります。そうした、調を都へ送らない年に当たった場合は、戸籍を運ぶためだけの特別な使者が立てられます。このような特定の使命のためだけに発遣される専用の使者を「専使〔たくめづかい〕」と呼びます。



posted 2010-10-06 08:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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