戸令19 造戸籍条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○19 造戸籍条(戸籍を造るの条)


《原文》
凡戸籍。六年一造。起十一月上旬。依式勘造。里別為巻。惣写三通。其縫皆注其国其郡其里其年籍。五月卅日内訖。二通申送太政官。一通留国。{其雑戸陵戸籍。則更写一通。各送本司。}所須紙筆等調度。皆出当戸。国司勘量所須多少。臨時斟酌。不得侵損百姓。其籍至官。並即先納後勘。若有増減隠没不同。随状下推。国承錯失。即於省藉。具注事由。国亦注帳藉。


《意訳》
戸籍は6年に1度作る。11月上旬より着手し、式に則って判断し作成すること。里ごとに1巻とすること。全部で3通となるよう写すこと。縫い目に皆、国名・郡名・里名・何年の籍と記すこと。5月30日までに終えること。2通は太政官に申し送ること。1通は国に留めること。{雑戸〔ざっこ〕・陵戸〔りょうこ〕の籍は、さらに1通写して、それぞれの属す官司に送ること}。必要な紙・筆等の調度は皆、当該の戸に出させること。国司はその時々に応じて斟酌して必要量を判断し、百姓〔ひゃくせい〕(=人民)を侵損してはならない。籍が太政官に到着したならば、いずれもまずすぐに受納して、その後に監査せよ。もし年齢の増減や隠(=戸籍に附けられないよう隠れること)や没(=死亡・行方不明)に矛盾するところがあれば、状況に応じて推問すること。国が誤りを認めたならば、すぐに省籍(=民部省および中務省が管理している籍)に、つぶさに事の理由を注記すること。国もまた帳籍に注記すること。


本
この条は、戸籍の作成に関わる手続きを定めたものです。

戸籍は6年に1度作成、したがってこれを元に行われる班田も6年に1度となります。
その国の国司が作成したものを、太政官は2通受け取って、1通を中務省へ、1通を民部省へ回します。

「雑戸」とは、主に軍備関連の役所に属す手工業技術者のうち最下層にある人たちです。良身分ながら蔑視されており、実情は良賎の中間に位置する身分です。
「陵戸」とは、天皇・皇族の陵墓の墓守で、元は賎身分ではありませんでしたが、養老令以後、賎身分に編制されて諸陵司に属しました。
雑戸〔ざっこ〕と陵戸〔りょうこ〕には「雑戸籍」「陵戸籍」というのが別にあり、雑戸籍はその雑戸が属す役所、陵戸籍は諸陵司が管理しています。

戸籍は、課役逃れの嘘がないか監査が行われます。古記によると、民部省がチェックして、誤りがあればその旨を中務省へも知らせたようです。

   ***

律令の条文には【勘〔かんが〕える】の語が何度も出てきます。しかし単純に「考える」の字を充てると「なんか違う」との印象を受けてしまうことが多い、わたしにとっては訳しにくい語でもあります。これまでは概ね「検討」というふうに訳してきました。けどそれもなんか違う。
この条文の中には3回も出ていますね。式の規定に依って戸籍を「勘え造る」、用いる文房具の多少を「勘え量る」、書類を先納して後に不備がないか「勘える」。
現代でも使われている例としては「数を勘定」「諸々の情勢を勘案」「様々な事情を勘考」「諸本を校勘」とか「勘がいい」「勘所を押さえ」「勘繰〔かんぐ〕る」ですかね。
【勘】の語は、思考・思案・考察といったような詳しくじっくり「かんがえる」ことではなく、続く具体的な実行行為へ向けて、広く見渡すようなマクロな視点からの照合や検討を加えつつ、迅速な判断を行うことのように感じられます。「これで大丈夫かな、ん〜と、よしOK、これでいこう!」と決めるところまで。一方、【考】の語は、何らかの実行行為への繋がりにはあまり関わらず、決定が出なくてもいいように感じられるのですが、みなさまの感覚ではいかがでしょうか。



posted 2010-10-01 17:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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