戸令28 七出条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○28 七出条(七出の条)


《原文》
凡棄妻。須有七出之状。一無子。二淫【《さんずい》+失】。三不事舅姑。四口舌。五盗竊。六妬忌。七悪疾。皆夫手書棄之。与尊属近親同署。若不解書。畫指為記。妻雖有棄状。有三不去。一経持舅姑之喪。二娶時賎後貴。三有所受無所帰。即犯義絶。淫【《さんずい》+失】。悪疾。不拘此令。


《意訳》
妻を棄てるには、以下の7つの理由(「七出の状」)に該当する必要がある。
1. 子(男子)がない。
2. 淫【《さんずい》+失】〔いんしつ/いんしち〕(=淫乱)。
3. 舅姑(ここでは夫の父母)に仕えない。
4. 口舌(推問を被ったり罪に至る類の悪言)。
5. 盗竊〔とうせつ/とうせち〕(=窃盗)。
6. 妬忌〔とき〕(=嫉妬やいじめ)。
7. 悪疾(=ハンセン病)。
皆、夫が(棄妻文書を)手書して棄てること。尊属・近親が同じく連署すること。もし文字を解さない場合は、畫指〔かくし〕(=画指=自署の代用に人差し指の長さ・関節の位置を点で写し記す方法)によって証拠の印とすること。
妻を棄てる状況にあるといえども、棄てることのできない3つの理由(「三不去」)がある。
1. 妻が舅姑(ここでは夫の父母)の喪をつとめ終えた場合。
2. 結婚したときには賤しかったけれども、後に貴い身分となった場合。
3. 帰す実家がない場合。
しかしながら、義絶、淫乱を犯したり、悪疾である場合は、この令の三不去を適用しない。


本
この条は、男性側からの離婚相当事由に関する規定です。

離婚に対する法の関わり方は4種類あります。

a. 夫婦間の自由意志による協議離婚。これについて、法は何も規定しません。

b. 一方からの離婚。法の規定を満たす場合にのみ認められます。
女性の側からは結婚条の規定に該当すれば「改嫁」が認められます。
男性の側からは本条の規定に該当すれば「棄妻」が認められます。「棄妻」は、義絶・淫乱・悪疾、または、「三不去」に該当せず「七出の状」に該当する場合にのみ認められることになっています。
ただし、わが国の古代の婚姻(離縁)システムは周知のごとくで、実際はかなり自由に行われていたみたいですよね。

c. 法による強制離婚。
先姦条に該当する場合や、あるいは殴妻祖父母条に該当する場合(主に家庭内暴力・殺人に該当するもの)等です。これを「義絶」といいます。

d. 婚姻不成立。
正当な手続きを経ていない嫁女棄妻条に該当するような場合は、そもそも婚姻自体が成立しておらず、したがって離婚ともなりません。


なお、離婚相当事由に、篤疾のうちの悪疾(=ハンセン病)のみが挙げられています。これは悪疾が重度障害(篤疾)だからとか治りにくい病気だからということではなく、接触感染予防の側面から認められた規定と考えられます。篤疾等の規定については目盲条を参照してください。


※個人的なメモ
【泆】〔しつ/しち/いつ〕



posted 2010-10-27 17:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令27 先姦条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○27 先姦条(先姦の条)


《原文》
凡先【姦】。後娶為妻妾。雖会赦。猶離之。


《意訳》
正式な婚儀よりも前に婚前交渉し、その後で娶って妻妾とした場合、(婚姻外の情交としての「姦罪」が)赦免されたとしても、なお離婚させること。


本
この条は、婚前交渉後の婚姻を認めない規定です。

婚姻外の情交はいずれも「姦罪」という罪に当たる、ということになっていました。

ただし、わが国の古代の婚姻システムは周知のごとくで、この条文を活かすことはできなかったようですね。
輸入され、わが国の実情に合うよう手を加えられた律令ですが、この条文が敢えて削られなかった点は興味深いです。


※個人的なメモ
【姦】=【姧】

posted 2010-10-26 22:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令26 結婚条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○26 結婚条(結婚の条)


《原文》
凡結婚已定。無故三月不成。及逃亡一月不還。若没落外蕃。一年不還。及犯徒罪以上。女家欲離者。聴之。雖已成。其夫没落外蕃。有子五年。無子三年不帰。及逃亡。有子三年。無子二年不出者。並聴改嫁。


《意訳》
婚約後、3ヶ月経過しても理由無く成婚に至らなかった場合、及び、逃亡して1ヶ月以内に帰還しなかった場合、もしくは海外で行方不明となり1年以内に帰還しなかった場合、及び、徒〔づ〕罪(懲役刑)以上の犯罪を犯した場合には、女家が破談を希望したならばこれを許可する。成婚後であっても、夫が海外で行方不明となって、子がある場合は5年、子がない場合は3年以内に帰還しなかった場合、及び、逃亡して、子がある場合は3年、子がない場合は2年以内に出てこなかったならば、いずれも改嫁を許可する。


本
この条は、女性側からの破談・離婚に関わる規定です。

女性側からの破談や離婚は、この条文に該当するとき以外は認められません。

ここからしばらくは離婚や婚姻不成立に関わる条文が続きます。

posted 2010-10-24 17:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令25 嫁女条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○25 嫁女条(嫁女の条)


《原文》
凡嫁女。皆先由祖父母。父母。伯叔父姑。兄弟。外祖父母。次及舅従母。従父兄弟。若舅従母。従父兄弟。不同居共財。及無此親者。並任女所欲。為婚主。


《意訳》
娘が嫁ぐにあたっては、皆、先ず、祖父母、父母、伯叔父姑(父方のおじ・おば)、兄弟、外祖父母(母方の祖父母)に報告すること。次に、舅〔きゅう〕(母方のおじ)・従母〔じゅも〕(母方のおば)、従父兄弟(いとこ)に知らせること。もし同居共財している親族や上記の親族がいない場合は、いずれも娘の希望にしたがって、婚主(婚儀をつかさどる人)とすること。


本
この条は、婚儀をつかさどる親族について規定したものです。

「婚主(主婚)」とは婚儀をつかさどる人のことです。葬儀における「喪主」に相当する立場ですかね。

詳しくないのですが、日本の律令が手本とした中国では、結婚の際、両家から「主婚」が立って婚姻契約を結ぶ建前となっており、したがって、唐令におけるこれに相当する条文はしっかりと残っていないものの、婚主となる優先順位を規定したものであった可能性があるようです。

対して当時のわが国では、まず男女の合意があった後、女性の親が承認することで婚姻契約が結ばれました。そのためか、わが国では報告義務にとどまっています。わが国では妻と比較した妾の立場がさほど低くないのも、こうした婚儀の厳粛さの違いからでしょうか。

母方のおばは「姨〔い〕」といいますが、この条文では「従母」と表記されています。令文における親族の表記は、あまり統一されておらず、曖昧なように感じます。

posted 2010-10-21 17:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令24 聴婚嫁条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○24 聴婚嫁条(婚嫁を聴〔ゆる〕すの条)


《原文》
凡男年十五。女年十三以上。聴婚嫁。


《意訳》
男の年齢は15歳、女の年齢は13歳以上であれば、結婚を許す。


本
この条は、結婚が許される年齢を定めたものです。

「婚」とは、男が妻を娶ること、「嫁〔け〕」とは、妻が夫の家に入ることをいったようです。

ここからしばらくは婚姻に関わる条文が続きます。

posted 2010-10-21 07:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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