戸令25 嫁女条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○25 嫁女条(嫁女の条)


《原文》
凡嫁女。皆先由祖父母。父母。伯叔父姑。兄弟。外祖父母。次及舅従母。従父兄弟。若舅従母。従父兄弟。不同居共財。及無此親者。並任女所欲。為婚主。


《意訳》
娘が嫁ぐにあたっては、皆、先ず、祖父母、父母、伯叔父姑(父方のおじ・おば)、兄弟、外祖父母(母方の祖父母)に報告すること。次に、舅〔きゅう〕(母方のおじ)・従母〔じゅも〕(母方のおば)、従父兄弟(いとこ)に知らせること。もし同居共財している親族や上記の親族がいない場合は、いずれも娘の希望にしたがって、婚主(婚儀をつかさどる人)とすること。


本
この条は、婚儀をつかさどる親族について規定したものです。

「婚主(主婚)」とは婚儀をつかさどる人のことです。葬儀における「喪主」に相当する立場ですかね。

詳しくないのですが、日本の律令が手本とした中国では、結婚の際、両家から「主婚」が立って婚姻契約を結ぶ建前となっており、したがって、唐令におけるこれに相当する条文はしっかりと残っていないものの、婚主となる優先順位を規定したものであった可能性があるようです。

対して当時のわが国では、まず男女の合意があった後、女性の親が承認することで婚姻契約が結ばれました。そのためか、わが国では報告義務にとどまっています。わが国では妻と比較した妾の立場がさほど低くないのも、こうした婚儀の厳粛さの違いからでしょうか。

母方のおばは「姨〔い〕」といいますが、この条文では「従母」と表記されています。令文における親族の表記は、あまり統一されておらず、曖昧なように感じます。



posted 2010-10-21 17:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令24 聴婚嫁条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○24 聴婚嫁条(婚嫁を聴〔ゆる〕すの条)


《原文》
凡男年十五。女年十三以上。聴婚嫁。


《意訳》
男の年齢は15歳、女の年齢は13歳以上であれば、結婚を許す。


本
この条は、結婚が許される年齢を定めたものです。

「婚」とは、男が妻を娶ること、「嫁〔け〕」とは、妻が夫の家に入ることをいったようです。

ここからしばらくは婚姻に関わる条文が続きます。

posted 2010-10-21 07:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令23 応分条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○23 応分条(応分の条)


《原文》
凡応分者。家人。奴婢。{氏賎。不在此限。}田宅。資財。{其功田功封。唯入男女。}【ハ】計作法。嫡母。継母。及嫡子。各二分。{妾同女子之分。}庶子一分。妻家所得。不在分限。兄弟亡者。子承父分。{養子亦同。}兄弟倶亡。則諸子均分。其姑姉妹在室者。各減男子之半。{雖已出嫁。未経分財者。亦同。}寡妻妾無男者。承夫分。{女分同上。若夫兄弟皆亡。各同一子之分。有男無男等。謂。在夫家守志者。}若欲同財共居。及亡人在日処分。證拠灼然者。不用此令。


《意訳》
財産分割にあたっては、家人〔けにん〕と奴婢{氏賎は対象外とする}、田宅と資財{功田・功封〔こうふ〕は直系男女のみに入れること}を総計して分法を作ること。
嫡母〔ちゃくも〕(妾の子から見た、父の正妻)、継母〔けいも〕(嫡子から見た、父の次妻以下の正妻)、及び嫡子に、それぞれ2分{妾は女子(息女相続人)の分に同じ}。庶子(ここでは嫡子以外の息子相続人)に1分。
被相続人の妻家の所得は分割の対象としない。
兄弟(息子相続人)の誰かが亡くなっている場合は、その息子が父の分を継承すること{養子も同様とする}。
兄弟(息子相続人)が皆、亡くなっているならば、それぞれの息子が均分すること。
姑(被相続人の姉妹相続人)と姉妹(息女相続人)は、未婚同居であれば、それぞれ男子の場合の半分とすること。{すでに嫁いでいても、まだ財産分与を経ていない場合は同様とする}。
兄弟(息子相続人)の寡妻妾(未亡人)は、息子がいなければ、夫の分を承けること
{女性の相続分は上と同様(の考え方)とする。もし夫や兄弟が皆亡くなっているならば、息子がいてもいなくても、それぞれ男子一人分に同じとする。寡妻妾については、夫の家に在って志を守る場合(つまり再婚していない場合)にのみ適用する}。
もし同財共居を希望する場合、及び、被相続人の存命中に行った処分の証拠が瞭然である場合には、この令は用いない。


本
この条は、遺産相続にあたっての分割方法を定めたものです。

息子相続人とか息女相続人とか、変な言葉遣いしてますが(^^;、大雑把に以下のルールとなります。
養老戸令応分条図
被相続人の妻と嫡子(亡くなっている場合はその息子)が2分。
嫡子以外の息子(亡くなっている場合はその息子)が1分。
被相続人の姉妹と被相続人の娘は、未婚同居ないしまだ財産分与されてない場合に限り、半分。
被相続人の妾も、半分。

たとえば、被相続人の妻と妾、嫡子とその弟と妹、この5人が相続人である場合、妻と嫡子の取り分4、弟の取り分1、妹の取り分0.5と妾の取り分0.5で1、なので価値を12等分して、妻と嫡子がぞれぞれ4ずつ得て、弟が2、妹と妾がそれぞれ1ずつ得ることになります。

被相続人の息子たち全員が亡くなっている場合、被相続人の孫たちが、嫡子の子・庶子の子の区別なく(令義解にその旨の注釈があります)均等に分けます。
被相続人の息子が亡くなっているとき、その家に息子(被相続人の孫)がいなければ、被相続人の息子の未亡人が、夫の分を承けます。ただし、すでに再婚している場合はその権利を失います。
女性の場合、他に優先される相続人がいない場合に限り、自分に息子がいるといないとに関わらず、男子一人ぶんを承けます。

功田・功封とは、勲功によって与えられる田地や封戸〔ふこ/ふご〕(この戸口の納める租庸調が、その勲功者の収入となる)のことです。

養老令におけるこの条文は遺産相続法ですが、唐令におけるこれに相当する条文は家産相続法です。大宝令ともかなり異なっているようです。

家産とはその「家」が所有している財産(家財)のことです。家財道具というような狭い意味ではなく、家族の共有財産であって「家」を維持するのに必要なもの。家長の管理下にあるとしても、家長の個人財産ではない(だから家長が亡くなっても遺産とはならない)。
現代だと、山林田畑・工場・倉庫・農工機械、神棚・仏壇・お墓....井戸・庭の木....洗面台....食卓....こたつ....その上に載ってるみかん....? ともかく、我が家のものに間違いないけど、家族の誰かのものではないもの。

律令当時のわが国では、明確な「家」の財産(家産)という概念がなく、私有財産は、「氏」の財産であるか、または、誰か個人の財産であり、夫婦といえども財産を共有してはいなかったようです。

そんな中で僅かに、家人・奴婢、田宅・資材は、家長の管理下にある「家」の財産と見なされていたのでしょうか。雑令家長在条により、家長の許可なく「奴婢・雑畜〔ぞうきゅう〕・田宅、及び、その他の財物」を勝手に売買することは禁じられており、「家」が絶えたときには、喪葬令身喪戸絶条の規定にあるように、田宅・資材は四隣五保の管理下のものとなって、家人・奴婢は原則的に解放されます。

氏賎は「氏」に属すので、「家」の家長が亡くなってもその遺産とはなりません。ちなみに、氏宗(=氏上・氏長者)が亡くなった場合、継嗣令継嗣条により、その継嗣については、天皇の勅を聴くことになります。けっこうな大事ですね。

posted 2010-10-20 16:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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