戸令14 新付条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○14 新付条(新たに付けるの条)


《原文》
凡新附戸。皆取保證。本問元由。知非逃亡詐冒。然後聴之。其先有両貫者。従本国為定。唯大宰部内。及三越。陸奥。石城。石背等国者。従見住為定。若有両貫者。従先貫為定。其於法不合分析。而因失郷。分貫。応合戸者。亦如之。


《意訳》
新たに戸籍に附けるときは、皆、保証を取り本籍のない理由を問うこと。逃亡や、詐り、なりすましでないことを確認し、しかる後に許可すること。先のものと2ヶ所に本籍があるならば、本国(本来の国)に属すものと定めること。ただし大宰の部内、及び三越、陸奥、石城、石背等の国では、現住所に属すものと定めること。もしそれらの国の2ヶ所に本籍があるならば、先の本籍に属すものと定めること。法に依れば析分できない例であって、(争乱等による)失郷のために本籍より分けたり、事情に応じて合戸したりする場合は、また同様に処置すること。


本
この条は、新たに戸籍に附ける場合、及び、2つの本籍を持っている場合の処置を規定したものです。

課役を免れるには、逃亡の他に、主な不正手段として「詐冒隠避」の4種類がありました。
「詐」とは、いつわること。これは自分には課役免除の権利があると詐称することです。たとえば、賦役令三位以上条の規定「三位以上の父祖、兄弟、子孫、及び、五位以上の父子は、いずれも課役を免除」とか、賦役令孝子順孫条の規定「孝行息子等の名声を認められた人と同じ戸籍にいる家族は全員課役を免除」などの条件に該当します、と嘘をつく例ですね。目ええ。名声によっても課役免除されたんですよ。「妻のカガミ!」とかね(^_^)
「冒」とは、名違え〔なたがえ〕すること。つまり、別人になりすますことです。わたしは五位の誰々であるなどと詐称する例。
「隠」とは、隠れること。逃亡以前の段階で、戸籍に附けられないよう隠れている例です。
「避」とは、避る〔さる=さける〕こと。疾病者をよそおって、課役の減免を取り付ける例です。

上記のような例でないことが保証・確認されれば、新たな戸籍に附けられます。
保証は「保人〔ほうにん〕」・「証人」によって行われます。
証人とは、現代と同じく「〜ですよ」と証言(だけ)を行う人のこと。
保人とは、現代の連帯保証人と概ね同じで、代行責任までをも負います。

2ヶ所に本籍がある例は主に、父の国と母の国の両方で戸籍に附けられた場合で、当時の人にとっては「あ〜、そういうことあるよねー」な話だったようです。このような場合、本来属すべき「本国」に戸籍を定められたようですが、その「本国」を、令義解や令集解では概ね「父の国」と見なしているようです。

ただし、先に別の国で本籍を持っていたとしても、現住所が要衝地である場合は、現住所の方を優先的に本籍地とされました。

この条にある失郷や、没落あるいは子孫が途絶えたりして、富裕な戸に引き取られ、その戸籍に附けられた個人や家族を「寄口〔よりく/よせく/よりこう/きこう〕」といいます。


※個人的なメモ
寄口、寄人の参照不明。
官制大観訳文誤り。→修正しました(09/27)


posted 2010-09-24 19:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令13 為戸条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○13 為戸条(戸を為すの条)


《原文》
凡戸内欲折出口為戸者。非成中男。及寡妻妾者。並不合折。応分者。不用此令。


《意訳》
戸内より人を分け出して、新しく戸を作りたいとの要望がある際、その人が中男になっていない場合、及び、寡妻妾の場合は、いずれも分けることはできない。財産の分割には、この令を適用しない。


本
この条は、戸口を分けることのできる条件を規定したものです。
戸主条の続きとなる条文ですね。

戸口を分けることを「析出〔せきしゅつ〕」とか「析分」などといいます。【析】は「析つ〔わかつ〕」意で、【折】と同じです。現代人がなじみのある「分析」という語もそうだけど、分けた後で新しいものが現れる感じの語ですね。1本の枝からもう1本の枝が現れる。

16歳以下の男性や寡妻妾(独り身の女性)は不課口なので、その人が新しく戸主となるような家は概ね不課戸となってしまいます。この条文は、そのような不課戸をなるべく出さないための規定といえます。

ちなみに、析出の例ではありませんが、男性の家族が自然と死に絶えて女性しか残っていないような場合は「女戸」といったようです。

当時の律令の注釈書として、これまで何度か「令集解〔りょうのしゅうげ〕」を引用しましたが、今回は「令義解〔りょうのぎげ〕」も使ってみます。こちらは、天皇が命じて作らせた公的な注釈書です。律令の条文解釈について一定の基準を設け整えるための政府見解ですね〜。

その令義解において、本条文の末尾には以下のような注釈が付けられています。
※原文は新訂増補国史大系「令義解」に依ります。


《為戸条の末尾に関する令義解注釈》
謂。縦非成中男。及寡妻妾。然猶堪為戸主者。亦合聴分也。

《意訳》
たとえ中男になっていなかったり寡妻妾であってもなお、戸主とするに堪えるならば析分を許す、ということである。


16歳以下であったり女性であっても「戸主とするに足る」事情がある場合は許されたようです。

では、「堪える」かどうかの基準はなんだったのでしょう。やはり課戸として成立し得るかどうかでしょうかね。明確な答えは見つかりませんでしたが、先に取り上げた戸主条についての令義解・令集解の注釈に、


《戸主条の戸主に関する令義解注釈および令集解の注釈の一部》
謂。嫡子也。凡継嗣之道。正嫡相承。雖有伯叔。是為傍親。故以嫡子為戸主也。

《意訳》
戸主は嫡子である。正嫡が跡を継ぐのが継嗣の道である。仮に(同居の)伯叔〔おじ〕があっても、こちらは傍流の親族とする。ゆえに嫡子を戸主とする。


《戸主条の戸主に関する令集解の注釈》
母男二人男不任者。亦母任耳。

《意訳》
(継嗣は原則男であるが)母と男性(有資格男性の意ではなく単に息子の意と解釈していいか?)の二人があって、男性が幼少である等、戸主として不適任である場合は、母を戸主に任じる。


とあります。すなわち、戸主が亡くなったとき、その兄弟(幼少の可能性もあるが、ここでは取りあえず大人の男性とする)が家に同居していたとしても、次の戸主となるのは嫡子なのであり、その嫡子が不適任の場合は母が戸主となるんですね。戸主が不課口であったとしても、戸内に課口がいれば課戸として成立し得るとはいえます。
令集解は他にもウニャウニャと書いてあるのですが、あまりにも長いので省略。

跡継ぎの条件については、併せて、継嗣令も参考になさってみてください。

▼追記▼
posted 2010-09-23 18:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

戸令12 聴養条

現代語訳「養老令」全三十編:第八編 戸令 全45条

○12 聴養条(養を聴〔ゆる〕すの条)


《原文》
凡無子者。聴養四等以上親於昭穆合者。即経本属除附。


《意訳》
子がない場合には、四等以上の親類の、子の世代に合致する者を養子とすることを許可する。すぐに本属(本籍のある官司)に報告して、旧い戸籍から除き新戸籍に附けること。


本
この条は、養子を取るための条件と手続きを定めたものです。

ただしこの条文は男性が家を継いでくれる養子を取るにあたっての話で、女性が養子を取ることはできませんでした。

許可されているのは、子の世代に合致する者を養子とすることでしたが、いろんな継承問題が絡んでくるため、実際には弟や従兄弟を養子としている例も少なくなかったようです。

「昭穆〔しょうぼく〕」とは、中国に古くからあるしきたりです。その家系の代々の世代を「昭」の世代と「穆」の世代とに かわりばんこ に分けて、廟の まつりかた を変える、というようなものです。
中国や韓国には、こうした 一族の世代を区別する しきたりが何かしらあるのに、日本では一般的にそれに相当するようなものが思い浮かびませんね。興味深いことです。

posted 2010-09-22 17:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ:08:養老:戸令 現代語訳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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